私が担当している後見類型のAさんは、認知症がある86歳の女性で、お一人で暮らされています。子はおらず、代わりに3歳になるオスの室内犬を飼っています。Aさんは以前、訪問販売等でイオン発生器や守り本尊など多数の物品を購入したため、弁護士が介入することになり、債務整理を行った経緯があります。それまでは隣に住む姪が支援をしていましたが、たび重なる金銭支援(金額にして50万円)により、これ以上は公的な支援が必要であると関係者が判断し、地域福祉権利擁護事業に繋がってきました。同事業で半年間サービスを行った後、その弁護士の支援のもと成年後見制度の申立をし、北九州市社会福祉協議会が成年後見人に選任されました。

 私は、Aさんの担当支援員として、2週間に1度、生活費をお届けするためご自宅を定期訪問しています。サービス開始当初は「通帳を返して。自分で管理できる。」と言ったり、ヘルパーやデイサービスの利用を拒否したりしていました。また、訪問販売が来ると不必要なものを契約してしまうため、その都度、取消権を行使し、契約解除の手続きを行いました。悪徳業者対策として、【お金に関することは権利擁護・市民後見センターまで連絡してください】と書いた張り紙を作成し、ご本人の了承を得て玄関内に張っています。

   Aさんは短期記憶障害のため、生活費のしまい場所をたびたび忘れてしまいます。そのため、訪問看護師さんは、ご本人宅での看護サービス時間の大半を生活費の捜索に充てざるを得ない状況でした。そこで、ご本人に生活費をお渡しする際には、一部を財布の中に入れてもらい、残りのお金をしまう場所を私が確認するようにしました。書棚のアルバムの間だったり、引き出しの新聞紙の下だったり・・・。それでも、時々、お金を移動させてしまい分からなくなるので、ご自宅内に予備費を準備しておき、ご本人が「お金がない。」と言い出したら、ヘルパーさんや訪問看護師さんにそこから渡してくださるようお願いしています。

 Aさんのご自宅に布団はなく、毎晩居間のこたつで就寝されていたようでした。そこで、ベッドの購入を検討しましたが、ケアマネージャーとも相談し、この先の生活を考えた結果、購入ではなくレンタルすることにしました。それに合わせて、ベッドパッドや夏布団を購入しました。ベッド搬入に合わせ室内を片付けているときに、本人がいつも過ごされている仏間の照明が点かないことに気付きました。蛍光灯を取り換えても点かなかったので、近所の電気屋さんに修理を依頼し、合わせて家中の照明器具を点検してもらったところ、階段や風呂場など家中の多くの照明が点かない状態でした。福祉サービスなどで関係者が訪問するのは主に昼間なので、誰もそのことに気付いていなかったのです。Aさんは、毎晩真っ暗な部屋の中、一人で過ごし、不安な思いをされていたのでしょうが、翌日になるとそれを訴えることすら忘れてしまうのだと思います。結局、一日かけて家中の照明器具の取替えを行ってもらいました。

 ベッドを使い始めてすぐに、ご本人がレンタル会社へ「ベッドを引き取って欲しい。」と連絡をしてきたとの情報が入りました。ご本人に理由を尋ねると、「犬がベッドの上に乗って粗相をするのが嫌だ。」と言われますので、「これはAさんのベッドだから安心して使って下さい。」と何度も説明し、しばらく様子を見ることにしました。長い間ベッドを使っていなかったからか、ベッドパットやシーツは剥がしてしまいますが、代わりにコタツで使っていた長座布団をベッドの上に敷いて寝ているようでした。ひと月ほど経ったころにはベッドにも慣れてきたようで安心しました。

 Aさんはわが子のように飼い犬を可愛がっていますが、予防接種やトリミングなどの世話はきちんと出来ません。保健所から届く「狂犬病予防接種会のお知らせ」のはがきも紛失してしまうので、関係者が気づいた時には近所の公園で開催される予防接種会は終わっています。仕方なく、毎年、タクシーで動物病院へ行き、予防接種を受けています。もちろん、Aさんお一人で愛犬を連れては行けないので、自費のヘルパー(介護保険外)に同行を依頼しています。また、この愛犬は毛足の長い犬種で、すぐに毛が目に覆いかぶさり前が見えなくなってしまいます。以前は定期訪問の時に、私が目にかかる部分を頻繁にカットしてきましたが、債務の返済が終了したことを機に、ペットショップへ送迎付きのトリミングを依頼しています。タクシー代や自費のヘルパー代、送迎付きのトリミング代など、どれも割高ですがAさんが安心して愛犬と暮らしていくための必要経費だと考えています。

 Aさんのケアマネージャーは、在宅生活に限界が来た時には、ペットと一緒に過ごせるグループホームへの入所を考えているようです。Aさんが今のまま、少しでも長く愛犬と快適な在宅生活が続けられるよう、関係者で協力し合い、情報を共有しながら、Aさんを見守り、支援していきたいと考えています。

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